仔羊フルコース
北海道の羊飼い・武藤さんの仔羊のことを書きはじめて、3日目になりました。
今日はいよいよ、食事会当日の様子をお伝えしようと思います。
今回は、羊の原毛屋・スピンハウス ポンタさんのスタッフと武藤さんの御親戚、合計5名様による御食事会です。
仔羊のコースにあわせて、白と赤のワインも1本ずつ出してくださいとのこと。
それで、今回選ばせていただいたのが、この2本。
左が、本日の白ワイン。「リムー オータン」
アミューズ(お付きだし)から仔羊をお出しする、本日のコースにあわせて、しっかりめの白。
右は、「サンジョセフ レ・ラルム・ド・ペール」
私達が大好きな作り手、アラン・パレのワイン。コート・ドゥ・ローヌ地方のスパイシーな赤です。
そして…仔羊PARTY、いよいよ開宴!
アミューズは、「脳みそとこう丸のフライ トマトとケッパーのマヨネーズソース」
向かって左、脳みそはフライにすると、カリカリの衣と、トロッとクリーミーな中との違いがおもしろく、味わいも濃厚で美味。
対して、こう丸はあっさりとした味わいです。
武藤さんからは、「皮をむくと、貝柱状になっている」と聞いていたのですが、まさにそんな感じでした。
噛むとほぐれるような食感です。
始まりから、貴重な部位を使わせて頂きました。
特にこう丸は、本当に珍しく、
茶路緬羊牧場と20年お付き合いのある、本出様でも初めて食べられたそう。
次は、冷たいオードブル。
「ホホ肉と舌のサラダ タプナードソース」
ホホも舌(タン)も柔らかくなるまで煮てから、冷製にしてサラダにしています。
2つの部位の独特の食感と、性格の違う旨みが楽しめます。
召し上がった後、「よく動かす部位は美味しい」とおっしゃっておられました。
その後は、温かいオードブル。
とにかく仕込みに時間をかけた、胃袋が登場。
トマト煮にした胃と食道を、ココットに詰めていきます。
その上から、グリュイエールチーズをふって、オーブンへ。
「トリップのグラチネ」完成。
そして、メインディッシュは、「6つの部位を使った1皿」
シンプルにして、贅沢な1皿なので、火の入れ具合に神経を使って…
一番美味しい状態でお出し出来るよう、手早く盛り付けます。
盛り付けの途中を撮りました。
真ん中に置かれた「ロース肉のキャベツ包み」が、完成したら見えにくくなってしまうので。
こちらは、ロース肉を一度強火でさっと焼いたものに、マスタードを塗り、
キャベツとクレピーヌ(豚の網脂)で巻いて火入れしたお料理。
周りに並んだのは、右から時計回りに、腎臓、横隔膜、心臓のソテー、上がレバーのムニエル
仕上げに、スペアリブのローストを盛り付けて、完成です。
ソースは、白ワインをベースにした、マスタードのソース。
上からみると、こんな感じ。
最後は、ガトーショコラで締め括り。
「ちょ仔羊」も喜んでいただけたみたいで、よかったです。
本出様のご厚意で、私達もすべての部位を味見させていただきましたが、
個性のある内臓、上品な味のロース…、どれも本当においしかったです。
こんなに一度に食べ比べれる機会も少ないので、本当に貴重な体験をさせていただきました。
一昨日のブログで紹介させていただいた、「羊料理の本」で武藤さんはこう書かれています。
(武藤さんが365日休まず世話をして育てた羊を、)
「屠殺場に連れて行く度に泣いたりはしませんが、悲しいのは1つの命を奪い、その肉体の多くを無駄にしなければならないときです。羊毛は屠殺前に刈りとっておきますが、皮は捨てます。内臓は注文がある物以外は廃棄します。血液は屠殺場の排水溝に流されてしまいます。こうして死んだ羊の肉体の多くは捨てられます。この手で捨てなければならない時、悲しくて羊に詫びたい気持ちでいっぱいになります。」
日本では、ジンギスカンなどで、羊の肉を食べる習慣はありますが、内臓を食べることは稀なのだそう。
今回は、「無駄なく命を頂く」という想いも、お皿に盛りこんだ食事会となりました。
私達はいきなり、「羊のすべてを有効に活用する」モンゴルの遊牧民のようにはなれないけれど、
今回の食事会に関わらせていただいたことで、食材ひとつひとつを、もっと大切に無駄なく扱いたいと、改めて感じるようになりました。
1つの命が、次の命を育むということを忘れないように…
今回のお食事会の様子、スピンハウスポンタさんのブログにも載せていただいております。
お客様目線からみたお料理もぜひチェックしてみてくださいね。
→http://www.spinhouse-ponta.com/